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「クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰」(今村 友紀) [ファンタジー/ホラー/ミステリ]

店頭で見かけて、腰巻きの惹句が面白そうなのでメモ代わりにiPodTouchで表紙を撮影して(最近こればっか)、図書館で予約して借りて読んだ。最近は単行本を買うことは月に1冊くらいしかない。無収入なので、極力図書館で借りるようにしている。それでなくても過去の遺産ストックは大山塊をなしているのだし。

 もしも買っていたら「金返せーー!」と叫ぶところだった。
 一読して(ということは、読点(「、」)を全く使わないという凶悪な文体にもかかわらずあっという間に読めた、つまり読み易かったということだが、短いからという理由もある)、なんじゃこりゃー!これで「文藝賞」を取ったのか、まるでポプラ社小説大賞のアレの再現ではないか!という感じ。ちなみに、アレとは「KAGEROU」のことではなく(あれは読んでいない)、「削除ボーイズ0326」のことである。

クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰

クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰

  • 作者: 今村 友紀
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2011/11/11
  • メディア: 単行本

 渋谷にある女子高で授業中に突然閃光がした後轟音が響く(てっきりこれは核爆弾が炸裂かと思わされるが、どうもそうでもなさそう)。
 戦闘機(表紙にはレシプロ機が描かれているが、今時それはないだろうよ)が飛び回り、体育館は爆発し、グラウンドには灰が降る。戦争なのかテロなのかわからず、そこに登場するのはスティーブン・キングを思わせる人食いの怪物。ありゃありゃ、なにこれ非現実的ホラーファンタジーなの?
 で、逃げに逃げてのサバイバル。それも、鏡に写る世界が微妙に異なる幾つものパラレルワールドになってしまい、この世界自体が記憶と異なって(死んだはずの子が生きてたり、いきなり母親が消えてしまったり)、もうワヤでんな、のハチャメチャぶり。ただの悪夢じゃねーか、こんなもん、とも言いたくなるくらいの脈絡のなさ。
 読点(「、」)を全く使わない書法というのは初めて見たが、変なことをするものだ、と思った。その割に意外に読みやすいのは、ラノベ文体で、やたら(極端に長いのは辟易するが)擬音語を使ったり、語彙が極めて貧弱で簡単な言葉しか使っていないからだろう。なにしろ、この作家(の名に値するとも思えないが)は殆ど小説なんて読んだこと無いらしいのである。これもあの作者と共通している。つまり、文学的素養がゼロである。女子高生という作者のイメージだけで構築できる浅薄なストーリーで、取材とか参考文献とかの下地がまるで無い机上の作文で、社会経験もないのが透けて見えてしまう。作者の薄っぺらさが見え見えなのである。文体にもそれは出ている。
 実は作者は東大医学部のエリートで、(その後文系に転向して今院生)、今までに『世界一わかりやすい東大受験攻略法』シリーズなんてのを書いてるらしい。それで満足してりゃいいものを…。Amazonのレビューでもすこぶる評判が悪い。

 ところが、斎藤美奈子氏は、朝日新聞の書評
>この小説の今日性は事態の物語化を拒み、状況だけを描こうとする点にある。登場人物はほぼ女子だけ。しかも彼女らは戦いに参加しない。情報が遮断された「一人称の世界」のリアルとはこういうことかもと思わせられる。秀作である。…小説の構造や表現上の効果に意識的なのだ。
なんて書いてるが、首肯しがたい。そんな御大層なものか?小説を文学を舐めてるだけでしょ。斬新さを演出してる点は確かに意識的かも知れないけれど、一体何を言いたいのかまるで伝わらない、空無な作品だ。
 少しだけ、不条理極まる世界に放り出されて実存的な問いを自分に投げかける、みたいなところもあると言えばあるが、取ってつけたように生煮えである。賞の選者の高橋源一郎氏は「3.11以後の文学」と捉えたらしいが、実際はそれ以前に書かれている。あれ以後に読むとそう読める、ということなのか?まさか予見的な作品だとでも?いや廃墟で混乱してるだけだから、今になって読むとそういうふうにも読めるだけなんでしょ、と。

 もしこの作家が今後まともな作品をものしたら、私は慙愧の念に打たれるであろう。…などとdisりまくると、まるで自分が某知事になってしまったかのような感覚に陥って不愉快である。
タグ:駄作 ホラー
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フライヤー

読みにくい新作〜

今村友紀さんの新作『ジャックを殺せ』を読みました。
なんて読みづらいんだ〜そして、さっぱりわからない。ちょっとこれは、私には合わなかったな〜

birthday-energy.co.jp/
ってサイトは今村さんの本質にまで踏み込んでましたよ。彼の旬はあと10年ほど。商売しながら、作家なんかやっては、キミには向いていない。なんだそうですよ〜
by フライヤー (2013-10-26 02:26) 

ask

>新作『ジャックを殺せ』
ほほ〜!
まだ出版されるんですね。
私は読む気は全くありません。
件のサイト、見てきましたが、なんか異様なところですねぇ。
by ask (2013-10-26 11:09) 

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