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「ねじれた文字、ねじれた路」(トム・フランクリン) [ファンタジー/ホラー/ミステリ]

NHK・BSPの「週刊ビックレビュー」で昨年10月29日に見て、読もうと思い図書館に予約していたのが、今頃順番が来て読んだ。(ちなみに、2011年版「このミス」で8位、「文春」ではランク外。これだけでは読む気にはならなかっただろう。)

ねじれた文字、ねじれた路 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

ねじれた文字、ねじれた路 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

  • 作者: トム フランクリン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2011/09/09
  • メディア: 新書


 私は単なる殺人方法のトリックの謎解きのような、いわゆる〈本格〉ミステリはわざわざ時間をかけて読む気はしないのだが、これは違う。風土、風俗、職業生活の実相、不条理な苦難、友情、理不尽な暴力、性、などなど人間の普遍性がうまく描かれている。つまりは「文学」になっている。
 勿論「謎」もあり、それが解明されるのだが、そこに名探偵という虚構は登場せず、平凡な人物たちの行動で展開していくのがリアルである。つまり例の「ご都合主義」でない。

 二人の主人公、25年前の少年時代と現在、という4つの側面が行ったり来たり混じり合いながら進むので、若干構成が複雑だが、徐々に真相が明かされていく過程が興味深い。リーダビリティは高い。

 アメリカの少年時代を描いたミステリで記憶に新しいのは、同じハヤカワのポケミス「ラストチャイルド」で、これと似たような雰囲気がある。それはともに陽気なアメリカ人ヤンキーの脳天気なイメージとは隔絶している。一言で言えば相当暗い。心の傷の重さが読んでいて辛い。しかし、ひたひたと胸に迫る情感と切なさにあふれていて、こういうのは嫌いじゃない。
 この作品に賞を与えた〈アメリカ探偵作家クラブ〉というのは、こういう屈託のある傾向の作品を好む傾向があるような気がするのだが、どうなんだろう。
タグ:ミステリ
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