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「僕の妹は漢字が読める」(かじいたかし) [SF]

漢字が使われなくなった23世紀の未来日本」というユニークな設定なので、Twitterで発売前からこのように盛り上がった作品である。それを見て、ほほぉ言語実験小説なのか、そりゃ面白いかも、と買って読んだわけだが。どう受け止めていいのか、ちょっと混乱している。マジなのか、ネタなのか?

僕の妹は漢字が読める (HJ文庫)

僕の妹は漢字が読める (HJ文庫)

  • 作者: かじいたかし
  • 出版社/メーカー: ホビージャパン
  • 発売日: 2011/06/30
  • メディア: 文庫

 ライトノベルのあり方論みたいなところがあって、「メタ」な話かと思いきや、ご都合主義満載の、ガチで「妹萌え」や「ハーレム状態」や「ツンデレ」だったりの、中学生の願望充足用の展開するし…。私のようなラノベに縁の薄い輩にはちょっと無理目な作品だった。

 この作品自体が、23世紀のラノベ作品を近代語(漢字かな混じり文)に翻訳したものという設定なのだが、作中作の現代語(かなのみ)ラノベ(にして、その時代の純文学正統派!)を見ると頭がくらくらするほどの痴的文章で、これは絶対ふざけているとしか見えないのだが、この小説の元の作品全体がこんなオノマトペが半分くらいある文体で書かれている(という設定なのだ)としたら、そもそも近代語(漢語が頻出)に翻訳なんて不可能なはずであって(と言うか、そもそもそんな社会が成立存続し得るのか?ということにもなる)、既にそこで破綻している。漢語を使わずに(「どうが」なんてのは使ってるが)つまり和語だけで込み入った内容を表現するにはとんでもなく大量の説明的カナ文字記述を要することになるだろうし。…勿論これは無粋な難癖ではある。

(漢字を全く使わない、ということで連想するのは韓国の全ハングル化のことだが、常々不思議に思っているのが漢語(これはTVであちらの人が喋っていると時々分かる言葉が発される)の同音語がどう区別されているのか?という問題。中国語に忠実に発音していて、日本語のようには同音異義語がないのだろうか?)

 しかし、時折教科書体で挿入される書き手不明(恐らくクロハ)の擬古文とすら言っていい文体の部分はちょっと驚きだ。作者にはこういう文章を書く能力がある、というのが。つまり日本語力が相当あるではないか。端倪すべからざる曲者の出現なのか? しかし、それにしてはストーリー構成があまりに幼稚・安直に感じられるのだが。

 ところで、「漢字が読めない」というのは、読者一般の若い人達の傾向であって、そのひそかなコンプレックスにつけこんで売らんかなと意図した姑息な手法なのではないか?という疑惑を少し感じた。
 しかし、ラノベ読者というのは一般的にそんなに「漢字が読めない」とは思えない。まぁ、ルビだって多いけど。ほんとに読めない人たちはラノベいや漫画すら読まないだろう。
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