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「西巷説百物語」(京極 夏彦) [ファンタジー/ホラー/ミステリ]

 また京極夏彦を読んでしまった。「つまらぬものを…」とは思わないのだが。
 たまたまub7637さんからTwitterで(シリーズ物だけど独立して読める、的に)勧められて、そんだばと図書館に予約を入れておいたら意外に早く回って来てしまったので、借りて、

西巷説百物語 (怪BOOKS)

西巷説百物語 (怪BOOKS)

  • 作者: 京極 夏彦
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/07/24
  • メディア: 単行本

「借りたからには」
読まずばなるまい、
とて読んだという…。いや、そんな読み方では失礼なんじゃないかい?という気はするんだが。
 この作品は先行する「巷説百物語」「続巷説百物語」「後巷説百物語」「前巷説百物語」のシリーズ最後を飾る作品らしいのだが、私はそれらを全く読んでいない。それをいきなり読んでもそれはそれなりに楽しめたのだが、Amazonのレビューなんかを見てみると、前作を読んでいないと〈読みの深さ〉がまるで違ってしまうなぁ、と痛感させられてしまった。

 主人公は、「靄船の林蔵」という、裏稼業に携わる怪しくも魅力的な人物なのだが、これはこの巻で初めて主役になったらしい。それまでにも結構活躍しているようだが、そのへんの経緯やキャラがまるでわからないので、厚みが感じられないというアウェイ感。(←やはり読み方を間違えてる orz)

 設定や展開にもかなり強引な感じはする。人間の欲の深さ、煩悩のおぞましさ、罪深さ、不条理な運命などに翻弄された挙句の常軌を逸した行動。それを見抜いてどんでん返しに鮮やかに行動的に、というよりも「操作」的に謎解きをし解決(始末をつけると言った方がいいか)する手際の見事さ、ということになるのだろうが、妖怪などの超常現象を一切出さずに回収するというスタンスが徹底していて、これは成功しているのではなかろうか。

 京極のストーリーテラーとしての才能は存分に味わえた、と言える。ちょっと無理目なご都合主義も多々あるが、とにかくこの人の語り口の上手さは尋常でないので、引き込まれるのだ。
「カギ括弧の会話の後に地の文で」
その続きを加える、
という特異な記述法の効果は非常に面白くユニークだ。それも含めて声に出して発言されたのか、それとも内心の声なのか、相手が引きとって発したのかが不分明だったりするのだが、一人称とも三人称とも違う「空気人称」とでも言うべき文体か?
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ask

第24回柴田錬三郎賞は京極夏彦『西巷説百物語』が受賞、とのこと。via Twitter
by ask (2011-11-18 17:59) 

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