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「ロードサイド・クロス」(ジェフリー・ディーヴァー) [ファンタジー/ホラー/ミステリ]

 ジェフリー・ディーヴァーの作品で読むのは3冊目だ。前回書いたように、「ウォッチメーカー」に出てきたキネシクス専門家の刑事キャサリン・ダンスが主役(シリーズとしては2作目に当たる)。これは読まずにおらりょうか。

 この原発が大変な時期に娯楽を求めるのは〈不謹慎〉(しかも何ら経済効果のない、図書館の本を借りて読むという二重の意味で)なのは承知のうえで読んだ。
 刻々と深刻さを増す原発情勢にかじりついてあらゆる情報を把握し続けようとするのは、時間を消費しストレスを増し、精神にダメージを与える。気晴らしの娯楽やジョークはヒトにとって食べ物や睡眠と同様に必須のものである、という口実のもとに。
(などと言い訳をしてるが、要は単に意外に早く図書館の予約が回って来たという…)

ロードサイド・クロス

ロードサイド・クロス

  • 作者: ジェフリー・ディーヴァー
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/10/28
  • メディア: 単行本


 勿論読みやすく面白かったが、ディーヴァーにしてはややどんでん返しが少なかったんじゃないか?などと思ってしまった。いやいや十分繰り返されるんだけど、最初犯人と目された少年は多分違うんだろうな、というのは早々に臭っては来ていたので、第1のどんでん返しは私の中では不発だったのがそういう印象をもたらしたのかもしれない。なにしろ「ウォッチメーカー」で翻弄されすぎた感があるので。

 あと、サブのプロットが錯綜してややこしく理解しにくかった。背景が込み入った登場人物が多すぎではないか?そんなに盛り込む必要があるのかなぁ?と。ま、煩雑さはリアルさを狙ってのことかも知れないが。
 オンラインゲーム廃人や匿名掲示板炎上などの〈ネットの闇〉問題を背景に取り上げたのは興味深い。よく取材して「仮想世界」の異様さ・病相をリアルに描写している。捜査協力者としてハッカーの大学教授が出てくるが、非常に魅力的に描かれている。
 また大きな要素として家族(親子・夫婦)愛がある。様々な家庭のそれぞれに違う愛のかたち。独身男女間のも含めて興趣が尽きない。

 キネシクスの活用ぶりについては、存分に味わえた、とまでは行かないが、程良く存在感がある。やはりこの作品のキモである。さらにはむしろ、その能力の持つ桎梏に触れられていて、なかなか難儀な力ですなぁ、という印象も持った。ニーチェの「深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いているのだ」という言葉を思い出した。

 それにしても、以前も書いたが、
>読み終わって冷静になって考えてみると、いやいやそれはやっぱ無いんじゃないでしょうか?という気がして来る。
>いやぁあ〜やっぱり、こ れ は 無 理 が あ る っ し ょ。
というのは今回も同感だった。
 これでひとまず、この作家を読むのは当分ないだろう。(あっ、つまらないという意味じゃないですからね。他にツン読本がゴマンとあるだけで…。)
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