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「なう」の使い方 [言葉]

「お礼なう」というツイートにどうしても違和感を感じてしまう。
 「……なう」(今……をしていますよ)というTwitter界隈(「あめーばなう」含む)でしか使われていないこの隠語の関連で、どうにも最初から違和感を払拭出来ないのが「お礼なう」だ。誰も指摘しているのを見たことが無いので、これは多分私の個人的感覚なのだろう。(でも言いたい)
 大体こんなもともと「ヘンな隠語」の使い方に「正しい」も何も無いだろうが、ここは敢えて考えてみたい。〈日本語風紀委員会〉的な血がそうさせるのだ。

 この言葉は、ある有名人が自分の著書について、「買いましたよ」「読みましたよ」とつぶやいた一般人にRT返信する際の常套句なのだが、なぜ違和感を感じるのか? 別に(@で本人宛でなくフォロワー全員に見せようとしているという)商業的宣伝行為を嫌だと思っているわけではない。
 「お礼」と「なう」の接続がおかしいと思うのだ。一般に「なう」が使われるのは「昼食なう」とか「渋谷なう」とか「風呂上り全裸なう」とか、「今……をしています、……の状態です」という〈時制〉(今を示すこと)が意味を持つ場合だけだ。「明日は休みだなう」とか「昨夜のオフ会は楽しかったなう」などとはあり得ない表現で、いわば文法的に間違いだ。
 それに対して「お礼なう」は時制が違うという間違いではない。「お礼」という言葉には基本的に〈時制〉が存在しないのだ。「お礼申し上げます」に「今」を付ける必要は全くない。「おはよう」や「ありがとう」にも付ける必要がないのと同様だ。「なう」という接尾語をつけるまでもなく、それはその言葉を発しているまさに今現在のことであるのが明白だからだし、明日になれば無意味になるというものでもないからだ。謝意とは今という時間軸上の一点にのみ限定的瞬間的に存在するものではあるまい。
 もちろん例外的に「ずっと誤解していました。今こそここであらためてお礼を申し上げます」というようなケースでは時制が意味を持つ。しかし、(自著を買ってくれた人に対してお礼を言う事自体は全くおかしくないが)それを「今ここで」発しているのだという明らかなことをわざわざ示す必要はない。余分な付け足しだ。もしかして、その人は「なう」を「……する」だけの意味のネットスラングとして使っているのかもしれないのだけれども。(しかし、言葉のプロな人なんだけどなぁ)

 いくらTwitterがリアルタイムな共時性のメディアだからと言っても、「買ったよ、読んだよ」という報告に対しての「謝意」の表明は、いつ何時何分何秒に発するかは関係ないのだから「今(なう)」を強調する意味は無いのである。(「買ったなう」「読み終えたなう」はあり得る。時間軸上に特定される行為だから)
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コメント 2

もちろん

こんばんは。ご無沙汰しております。勉強になりました。・・・・なう、というのは私はつかったことはないのですが、すっと、何だろう?何だろう?やっぱり、「今」ということなんだろうなぁ。ぐらいにしか考えていなかったので、とてもよく分かりました。時制は大事ですね。時制に関しては、日本語は、少し曖昧な部分もあるので、逆に意識したいところですね。
by もちろん (2010-06-26 00:26) 

ask

もちろんさん、お久し振りですねー。元気ですか。
今はもうTwitterやめちゃってるんでしたっけね。
キャズムを超えた(500万人以上居るらしいですよ)今、再開する気持ちにはなりませんか?
by ask (2010-06-26 02:03) 

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