SSブログ

〈五十音各行+ハ行による笑い方〉づくし [言葉]

 笑いの基本ははひふへほハ行の音である。
 その頭に同じ(「は」ならアカサタナ…)の一音が付くのが、日本語の笑い方の法則である。母音が同じ音をつなぐ方が発声しやすいという機序があるため、と思われる。「ahahaha」「ihihihi」のように、舌や唇は二つの決まった状態の間を単純に行き来すればいいのだから。
 すると、「ひ」にはイキシチニというように相当多くの組み合わせが生じる。
 しかし、全ての組み合わせが実際に使われるわけではなく、むしろ採用(?)されているものの方が少ない。
 では一つ一つ検証してみよう。
【あ行】
「あっはっは」……ごく普通の、標準的平均的笑い。言わば「笑いの王道」。明るいが深みはあまり無い。
「いひひ」……下卑た笑い。この変形なのか「いっしっし」て大橋巨泉が使っていた。
「うふふ」……女性のちょっといたずらっぽいコケティッシュな笑い方。色気があっていいですねぇ。
「えへへー」……主に子供が褒められて嬉しくて笑うときの笑い方。可愛らしい。
「おーーーーーーっほっほっほっほっほ」……女王様とお呼び! 跪いて靴をお舐め!とSの極致だ。 只の「おほほ」なら乙にすました気取った笑い方。
【か行】
「かはは」……あまり無さそうだが、ちょっと突き放したような馬鹿にしたような響きがある。
「きーーーっひっひっひっひっひ」……ン?こりゃないな。いや、「きーーーしっしっしっしっし」ならある。アニメ「ワンピース」に出て来る悪役モリアの笑い声だ。
「くふ」……無さそうだが、力ないやるせない笑いでありそうな気もする。
「けへへ」……これはありそう。自嘲的に居直ってるみたいな。
「こほっこほっこほっ」……こりゃ笑いじゃなくて咳じゃないか。
【さ行】
「さははは」……無い。
「しひひひひ」…無い。
「すふふ」……これも無い。
「せへへ」……やはり無い。
「そほほほ」……結局さ行の付く笑い方はどれも無い。なんでだろ?
【た行】
「たはは」……呆れたような、思いがけないような。
「ちひひ」……無い。
「つふふ」……無い。
「てへへ」……照れ隠しだったり、まずいところを見つかっちゃった時のごまかし笑い。
「とほほ」……こりゃ笑いじゃなくて、嘆きの言葉だ。なぜ、「と」が付くと笑いでなくなるのだろうか?「途方に暮れる」の「と」なのかな? いや「徒労」の「と」かも。
【な行】
「なは、なは、なはははは」……昔せんだみつおがやってたね。
「にひひひひ」……永井豪のギャグ漫画の登場人物なら言いそうな気がする。
「ぬふふふふー」……同上。
「ねへへへ」……無いな。
「のほほほほー」……また「ワンピース」だけど、仲間の骸骨男がこんな笑い方だったかと。
【は行】
  基本形なので省略。
【ま行】
「まははは」……無い。
「みひひひ」……無い。
「むふふふふ」……これはある。含み笑い。相手の弱点見つけたり、とか揶揄するような笑い。あるいは大いなる自己満足か。
「めへへ」……無い。
「もほほ」……無い。
【や行】
「やはは」……無い。
「ゆふふ」……無い。
「よほほ」……無い。ヨーデルならあるか。
【ら行】
「らはは」……無い。
「りひひ」……無い。
「るふふ」……無い。
「れへへ」……無い。
「ろほほ」……無い。「さ行」と同じく皆無だ。
【わ行】
「わーーーーっはっはっはっはっは」……哄笑。豪快な笑い。aの前にwで一旦口をすぼめて「ため」を作るのでそのノズル効果で噴出力がアップしている。

 こうして見て来ると、子音にはそれぞれ造語力ならぬ「造笑力」に違いがあるようだ。笑いにふさわしい子音とそうでないのとがある、と。笑いという生理的現象にマッチする口唇や舌の動きとそうでない動きとがあるのだろう。
 この辺のことは既に言語学で研究されているのではないかと思うが、以上の私の分類は全くの自分の恣意的な言語感覚によるものなので、異論もたくさんあるだろう。



nice!(0)  コメント(5)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 0

コメント 5

duznamak

 面白いです。濁音シリーズ(「がはは」「ダーハッハッ」)とか、「ひゃ・ひゅ・ひょ」シリーズ(「あひゃひゃひゃひゃ」)、母音が違うシリーズ(「うは」「うひひ」とか。「にはは」と笑うキャラもいました)とかもやってほしいです。

 こうして並べてみると、「ひ」「ふ」は、造笑力が低いようですね。どちらも、口の開きの小さい、暗い母音であるというのが関係しているのでしょうか。
 あと、「かはは」はないけど「かっかっかっ」はある、「しひひ」はないけど「ししし」はある、といった現象も興味深いです。

 ところで、フィクションの世界には「やはは」と笑うキャラが実在します(この人→http://key.visualarts.gr.jp/product/little/chara_haruka.htm)。てなわけで、「やはは」は、僕としては「あり」ですね。
by duznamak (2008-09-23 17:59) 

ask

>濁音シリーズ
そういやそれもあったんだっけ、と今頃気づく私。「ぎゃはは」「ぴょほほ」なんてのもかぁ…疲れそう。

>母音が違う
>かっかっか
そこまで行くと、もう対応しきれない、というか余程暇ができたらやるかも。
ちなみに「かっかっか」って水戸黄門だっけ?
by ask (2008-09-23 22:36) 

duznamak

>「かっかっか」って水戸黄門だっけ?

 特に特定の人物を想定していたわけではないのですが、確かに水戸黄門もですね。「かっかっか」は、かくしゃくとした爺さまの笑い方として使われることが多いような気がします。あとは、アシュラマンとか?
by duznamak (2008-09-23 23:00) 

peco

もほほってたまになりません?
こう…ご飯を食べてる時とかに堪えきれない爆笑の波に飲まれた時とか。
口の中には咀嚼中の食べ物が満載で開けないから、こう…もほほほほ〜って…
なりませんよね…はい、そうですね…すいません…。
by peco (2008-10-07 21:32) 

ask

>もほほ
なるほど、M音は口を閉じて出す音なので、必至に噴き出すのをこらえての結果か。
あり得ますね。ご指摘どうも。
で、噴き出すのをこらえずに、いわゆる「噴飯」状態だと、「ぷゎっははははは」となるのかな。
by ask (2008-10-08 01:37) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。