文書中の文字と余白の表面積比に関する考察 [表面積]
昨日〈改行〉に関する記事を書いて、コメントを貰ったところで、タイトルの問題が浮かんだ。これは「言葉」カテでなく「表面積」カテのネタではないかと思った。久々にこのネタを発見したのは望外の喜びだ。「表面積」ネタはなかなかみつからないので…。
さて、私は〈1段落1改行〉主義者である。と言うか、それが普通・一般的である。新聞記事だって小説だって論文だって、およそまともな日本語の文書は、複数(勿論単数の場合もあるが)の文からなる段落の終わりで改行し、次の段落が字下げで始まるという形式を採っている。これが定着したのは明治以降だろうが、十分長い歴史がある。
だから、私がブログに書く時もその形式に従っている。例の「見栄えを気にして段落の切れ目でもないのに行末を揃えるために機械的改行を挿入してる」伊藤蘭じゃない若戸蘭さんたちにしたところで、意図した形が幸運にも読者の側で再現された場合の見た目の改行(文章の区切りとしての)は段落の末尾にしか付けていないのだ、当然ながら。つまり、彼らは勘違いは別としてトラディショナルな書き方をしているのである。
で、こういうごく当たり前の書き方が、実はブログには向いていないのではないか?という問題提起があった。michaelaさんが「紙に書く時は普通に段落で改行するが、ブログでは1文ごとに改行し、段落の切れ目では1行空けるようにしている」と述べられたのである。実際彼女の文章は非常に読み易いので、看過出来ない指摘である。これを数式的に表現すると、
「ブログなどオンライン文章の読み易さは、文字/余白の比率の大きさに反比例する」
という法則があるのではないか?という仮説が成り立つ。つまり、文字の少ない、余白の多い(文字表面積比が小さい)文面の方が読み易いんじゃないか?ってことだ。
実はこれは以前から、紙媒体の本でも、赤川次郎の小説などで既に指摘されていた事でもある。最近では劇団ひとりのベストセラー「陰日向に咲く」がそういう体裁であるらしい。ってことは、必ずしも原稿枚数稼ぎばかりではなく、読者に受け入れられ易い形態が〈見た目白っぽい〉紙面だ、ということだろう。確かに文字数が少なければページを繰るのは早くなって〈読み易さ〉感は増すだろう。
逆に、たまに見かける文章で、何十行も改行無しにびっしりと書かれているのがあるが、あれは見ただけで読む気を無くしてしまう。私の文章も1段落がつい長くなりがちで、それだけでいったい何人の読者を失った事か、と思うと辛いものがある。勿論「適宜改行を入れる事が読み易さのためには必要である」とは認識し、励行してはいるのだが…。
ところで、文字対余白表面積比は、字数だけではなく実はもっと微妙な要素がある。かな対漢字比率である。漢字の比率が見た目の白っぽさに影響するだろう。しかも、各漢字の画数も関わる。画数の多い(つまり難しい)漢字の多用される文章は、ひらがなの多い文章よりも黒っぽくなり、また漢字自体の難しさも相俟って〈読みにくさ〉を増す傾向があるだろう。要するにインクの量が多いほど読みにくい、というわけだ。(地球に優しくない文章か?)
しかし、ことはそう簡単ではない。漢字の表意文字としての分かり易さは侮れないからだ。
●こういうひらがなだけのぶんしょうって、かえってよみにくくないですか?
●それより適当に漢字の入ってる文章の方が分かり易いですよね?
という効果もあるので、なかなかに複雑な状況ではあるのだった。要は「中庸がよろしい」ってことなのかなぁ?
私もマイカテゴリー考えてしまおうかと、つい思ってしまいました。
路上観察の赤瀬川原平のようなものを。新しい切り口で物事を総括すると言うか、俯瞰する、或いは重箱の隅を突くと言う姿勢は、新たな学問の糸口ともなり、知的好奇心を刺激して止みませぬ。
by アヨアン・イゴカー (2008-02-10 14:19)
あ、またまたnice!&コメ、ありがとうございます。
>路上観察の赤瀬川原平のようなもの
それ、いーですねぇ。スケッチ付きで載せるとなお良し、では?
ところで、私の「表面積」は、たまたま「前の記事とこの記事、表面積つながりになってますね」というコメントを頂いたのがきっかけでお遊びで作ったものでして、内容的にはまるで一貫性も脈絡もない、〈カテゴリー〉としては邪道の極み、牽強付会も甚だしいもので、汗顔の至りであります。「新たな学問の糸口」なんて、とてもとても。
by ask (2008-02-10 19:34)
こんにちは、はじめまして。
私も行間やら何やらと“読みやすさ”についてはいろいろ考え、いろいろ試してみています。
それで一つ感じるのは、縦書きと横書きの違いです。縦書きだと文章だらけでも読みやすいのですが、横書きで文章だらけだと読みにくいような気がします。特にモニターだと。
まあこれもモニターの横書きになれている若者たちだとだんだん変わってくるかもしれませんが。
by すうちい (2008-02-28 11:13)
すうちいさん、いらっしゃいませ。
お名前は(というか記事は)時々拝見していました。
>縦書きだと文章だらけでも読みやすいのですが、横書きで文章だらけだと読みにくい
なるほど、それは言えるかも。日本人のDNAに組み込まれた〈縦書きがデフォルト〉体質なのかもしれませんね。
>モニターの横書きになれている若者たち
思い出しましたが、随分前、「紙の本で読むより、ディスプレイ画面で読む方が好き」と言ってた若者が居て仰天したことがあります。
by ask (2008-02-28 22:23)