SSブログ

「生物と無生物のあいだ」(福岡 伸一) [ノンフィクション]

生物と無生物のあいだ

生物と無生物のあいだ

  • 作者: 福岡 伸一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/05/18
  • メディア: 単行本

分子生物学とはどういうものなのか、をハーバード大学医学部で研究員として過ごした経験の上に一般向けに分かり易く説き、生物という不思議な存在のあり方の本質に迫る本。読み応えがある。
 遺伝子工学、クローン、ES細胞、代理出産などなど、今テクノロジーの最先端はバイオ関連なわけだが、細かなこととなるといまいちはっきりした知識がある訳ではなかった自分にとって、なかなか有意義な本ではあった。とは言っても、全く新しい目からウロコが落ちる経験というのではなく、漠然と感じていた〈生命の実相〉が、明確に言語化されていて腑に落ちる、といったところだ。
 また、この業界いや学界か、のどろどろしたとさえ言える競争の激しさとか、現場研究者の過酷な生活とか、アメリカの諸都市の風物とか、興味深い話が沢山開示されている。
 DNAの二重螺旋の発見に至る過程の裏のエピソードは特に興味深い。またタンパク質の動きを可視化する試みの詳しい研究方法なども。
 本書のキモは、
 生物の本質は、絶えず構成物質が入れ替わる流れの中にある、相補性を持った〈動的平衡〉であり、それは時間の中で歴史性を持って展開する(機械とは似て非なる)一回性の存在である。
ということだが、これだけに要約してしまうとわかりにくいので、興味のある人は一読をお勧めする。
 この著者の文章はときに極めて文学的な調子を帯びる。それはこの本の初出が講談社のPR誌「本」に連載されたエッセイ風の読み物としてあったためもあろうが、元々詩的な感性豊かな人でなければ書けないほどの、鋭敏な感覚、外界に対して開かれた感性、そしてそれを内省的に深めて行く真摯さを持った人物だからこその文章だと言えるだろう。


タグ:生物学
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。