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「独白するユニバーサル横メルカトル」 [ファンタジー/ホラー/ミステリ]

  • 作者: 平山 夢明
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/08/22
  • メディア: 単行本
  グロテスクの極みを追究したような作品集である。それにしても装丁画の印象はギーガー風だなぁ。描いた画家の名は Edoardo Belinci というらしいが。なかなかキてる絵なので、拡大図を載せておこう。

 腰巻きの惹句は「本書は読書時、脳内麻薬様物質エンケファリン、βエンドルフィンが大量放出される可能性があり、その結果、予想外の多幸感、万能感に支配されることがあります。……平山本に対する依存性は読了者は非読了者に比べ約2倍から4倍高くなります。」だって…。ちょっと誇大広告気味だけど、確かに脳に効いてくる要素はある。「脳内座薬」かも。

 NHK/BS2の「週刊ブックレビュー」(10/15)で取り上げられていたが、そこでは「グロテスクなのに、なぜか爽やかさがある」というような意見が出ていた。確かに気持ち悪い世界ではあるのだが、描写がドライであり、また観念的な夢幻のようなリアリティの無さが、「絵空事」感を強くするので、「生々しさ」に欠けるきらいがあるためだろう。プラスチック製の物語とでも言えばいいか。で、その中のいくつかを。

 

「Ωの正餐」
カニバリズムと超肥満、脳の摂取による記憶獲得、数学の難題…これだけふんだんに出てくると、盛りだくさんのおもちゃ箱みたいで、楽しくなってくる。

「オペラントの肖像」
ブラッドベリの「華氏451°」の世界を思わせるが、目くらましのどんでん返しは見事。

「卵男」(エッグマン)
「ハンニバル」のレクター博士を思わせる人物が出て来てゾクゾクさせる。最後のどんでん返しがなかなか決まっている。

「すまじき熱帯」
 「すまじき」は「すさまじき」の略なのか?「すまじきもの…」と言えば「宮仕え」と続く、その用例ではないだろうに。てのは措いといて、こっちは「地獄の黙示録」を連想させた。あるいは秘境もの。

「独白するユニバーサル横メルカトル」
 表題作だけあって、ユニークな視点が面白い。地図が意識を持って喋る、などという設定は、相当無理があるように見えるのだが。さらには人に対して主体的に〈遮蔽〉と〈誇張〉という方法をもって働きかけたりするのだが、考えてみればこれは何のことはない、ヒトの脳の「パターン認識」のことに過ぎないじゃないか、とも言えるわけで。 

「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」
拷問を加えるプロフェッショナルと受けるプロという悪夢のような取り合わせ。内面世界の崩壊。後味が悪いが、贖罪による救済とも見える。


タグ:ホラー
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コメント 1

nanayo

こんにちは、コメントありがとうございます。
早速遊びに来ました。
いくつかの書評で絶賛されてたので、グロくても面白いなら読んでみよう!
と思って読んだんですが、
私はどうしてもラストに何かしらの「救い」を欲してしまうので、
そんなにはまりきれませんでした。残念。
でも、平山さんの本を読むのはこれが初めてなので、
他にもどんなのを書いているのか興味はありますね☆
by nanayo (2006-10-25 00:48) 

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