「風の影」 [ファンタジー/ホラー/ミステリ]
いやー、凄い小説でした。今年の私的ベストワンですね。
朝日新聞の書評(池上冬樹氏)から少し引用しますが、
> 小説を読む喜びにあふれている。物語の虜(とりこ)になることの愉(たの)しさがここにはある。
>物語に浸ることの陶酔と幸福がここにある。
ということですね。ぐいぐい引き込まれました。それは、ストーリーのたくみさは勿論ですが、
>読者をひきつけてやまないのは文体であり、紡がれるイメージの豊かさであり、そしてそれらが表す孤独な少年の打ち震える内面である。
という面ですね。文体、というか語り口が魅力的なんですね。訳も素晴らしい。
「ご都合主義」的小説というのがあるでしょう? ちょっとあり得ないような「偶然」によってストーリーが進行して行くという奴。勿論、小説というものには多かれ少なかれそういう面はあるんだけれど、それが鼻につく作品というのは結構多くて、その代表は私の読んだ中では森村誠一の「人間の証明」って作品で、あれを読んだ時には「おいおい、そんなのあり?」と白けまくったもんだけど、この小説も、相当「ご都合」的要素は強いんだが、それが鼻につかないんだな。30年の歳月を経て照応し合う二人の主人公の生き方の関わりの展開に、偶然よりも必然のような得心するものがあるわけだよ。
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